ユッケ食中毒なぜ繰り返される?富山に引き続き京都でも…

ユッケによる食中毒はなぜ起きるのか? ユッケ知識

ユッケによる食中毒はなぜ起きるのか?ルールを守れば安全なはずのユッケ。危険なのは提供する側の甘い認識だった!

2011年富山県の焼肉店で発生した発生した集団食中毒事件以降、新たに制定された「生食用食肉の規格基準」により、牛肉の生食による食中毒は減少しました。

しかし、2022年8月京都の食肉販売店で「牛レアステーキ」という商品名で販売されていた「ユッケ」を食した90代の女性が出血性大腸菌O157に感染し尊い命を落とされました。

ユッケで死亡を伴う食中毒は約10年ぶり、なぜ繰り返されるのか?

本記事では、ユッケを語るうえで避けてとおれない食中毒問題について、なぜ食中毒が起きるのか、安心して食べられる安全なユッケは存在しないのかなどを精肉店勤務20年以上で得た知識・経験をもとに解説します。

食中毒の原因菌「腸管出血性大腸菌」とは?

くるしい食中毒菌
画像提供:紫野いおりさん

ユッケによる食中毒の原因は、いずれも「腸管出血性大腸菌(O111、O157)」でした。

大腸菌のほとんどは無害で、家畜や人の腸内に存在します。
しかし、大腸菌の中には消化器症状(腹痛・下痢など)や合併症を引き起こすことがあり、「病原性大腸菌」と呼ばれます。

代表的な「病原性大腸菌」に「腸管出血性大腸菌(O111,O157)」が挙げられます。

「腸管出血性大腸菌(O111,O157)」は少量の菌数で食中毒を発症し、人から人への2次感染をおこします。

感染すると強い毒性を持った「ベロ毒素」を生み出します。

「ベロ毒素」の毒性は青酸カリの5000倍といわれており、血便や激しい腹痛の発症、重症化した場合には、溶血性尿毒症症候群(HUS)等の合併症を引き起こす特徴があり、最悪の場合は死に至ります。

子どもや高齢者など抵抗力の弱い方は、重症化しやすいので特に注意が必要です

実は牛肉内部には菌や寄生虫は存在しない

牛肉の生食は、非常に危険とされていますが、実は牛肉は安全な食材です。

肥育環境や体質から牛肉自体には菌や寄生虫は存在しません。

しかし、腸管内には細菌(大腸菌など)が存在します。

牛の解体時に腸管内の細菌が、牛肉の表面に付着し、それを口にした場合に食中毒を引き起こすというわけです。

牛肉の表面に細菌が付着していない、もしくは表面の細菌を殺菌すれば牛肉は生で食べても大丈夫ということになります。

わかりやすい例を挙げると、牛のレアステーキです。

表面を焼くことで、細菌は死滅するので中が生でも美味しくいただけます。

なぜ生肉に食中毒菌が付着するのか?

牛の解体時以外では、どのように生肉に食中毒菌が付着するのでしょう。

生肉に限らず、食材に食中毒菌が付着する原因はいくつかあります。

  • 人の手や調理器具を介して
  • 衛生害虫を介して

人の手や調理器具を介して

大腸菌が存在する可能性のあるホルモン(主に大腸・小腸などの腸管)に触れた手や調理器具(包丁・まな板など)を洗浄・殺菌を行わないまま別の食材を調理した場合に感染する可能性があります。

衛生害虫を介して

衛生害虫とは、人に衛生上の害を与える虫(ハエ、蚊、ハチなど)を指します。

中でもハエは、媒介害虫と言われ、感染症の原因となる細菌やウイルスを媒介します。

平成8年11月に、佐賀県内でO157に感染者が発生した施設内で、採取されたイエバエからO157が検出された事例があります。

その他の県からもイエバエからO157が検出された例があることから、害虫対策への注意が必要です。

参考:厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A

この他にも病原性大腸菌の感染経路の例はいくつも挙げられています。

食中毒予防のためには、手洗い・うがい・殺菌・消毒などの衛生管理をしっかり行うことが大切です。

牛レバー(内臓)の生食が禁止になった理由

生レバーなぜ禁止
画像提供:あるたんさん

牛レバーの生食が禁止になる以前は、生食用食肉の安全確保のため「生食用食肉の衛生基準」が定められていました。

▼「生食用食肉の衛生基準」の一部抜粋

 ・生食用食肉の成分規格目標
生食用食肉(牛又は馬の肝臓又は肉であって生食用食肉として販売する ものをいう。以下同じ。)は、糞便系大腸菌群(fecal coliforms)及びサルモ ネラ属菌が陰性でなければならない。

生食用食肉のトリミング(表面の細菌汚染を取り除くため、筋膜、 スジ等表面を削り取る行為をいう。以下同じ。)及び細切(刺身用に切 分ける前のいわゆる册状にする行為をいう。以下同じ。)を行う場所は、 衛生的に支障のない場所であって他の設備と明確に区分されており、 低温保持に努めること。 また、洗浄、消毒に必要な専用の設備が設けられていること。

引用元:厚生労働省「平成10年生食用食肉等の安全性確保について

このように当初は、牛レバーもレバー表面には細菌が付着していたとしても、レバー内部には細菌は存在しないという牛肉と同じ認識でした。

表面さえ殺菌処理(加熱、トリミング※)をすれば生で食べれるという考えです。

※トリミングとは、細菌に汚染されている可能性があるお肉の表面を削ぎ落とす作業。

しかし、2011年の食中毒事件以降に牛レバーの表面からだけではなく内部からも「腸管出血性大腸菌」が検出されたのです。

レバー内部に「腸管出血性大腸菌」の存在が確認された以上生で食べるのは危険ということで、2012年7月から牛のレバーを生食用として販売・提供することが禁止されました。

参考:厚生労働省「牛レバーを生食するのは、やめましょう

「腸管出血性大腸菌」による死亡を伴う食中毒事例

提供方法を守っていれば安全なはずのユッケ、なぜ食中毒が発生したのか原因を見てみましょう。

  • 2011年富山県の焼肉店「焼肉酒家えびす」
  • 2022年京都府宇治市の食肉販売店「MEAT&FRESH TAKAMI」

2011年富山県の焼肉店「焼肉酒家えびす」

焼肉店の人気メニューの一つ「ユッケ」

「和牛ユッケ」と称されたユッケを1皿280円という考えられない安さで食べることができたのが「焼肉酒家えびす」でした。

この安さもあり、1人で2~3皿注文する方も数多くいた人気メニューだったようです。

しかし、この人気メニューが5名の方の命を奪ってしまう集団食中毒事件の引き金となりました。

原因は、腸管出血性大腸菌O111に汚染された食肉をユッケに使用したことによります。

ユッケに使用した食肉は、仕入れ段階でO111に汚染されていたうえ、焼肉店での取り扱いも安全確保が充分ではなかったために食中毒が発症しました。

参考:厚生労働省「飲食チェーン店での腸管出血性大腸菌食中毒の発生について

食肉卸業者と焼肉店の問題点

この事件では、食肉を焼き肉店に卸した業者「大和屋商店」、そして、ユッケを提供した焼き肉店「焼肉酒家えびす」の双方に問題があると指摘されました。

双方の問題点は以下です。

「大和屋商店」側

  • 冷蔵庫が小さいため、肉同士が触れ合った状態で保存されていた
  • レバーとその他の肉の包丁・まな板の使い分けをしていなかった。
  • トリミングをしていない食肉を「焼肉酒家えびす」に対し、生食用食肉として卸していた。

「焼肉酒家えびす」側

  • 生食用食肉(ユッケ)に使用する牛肉のトリミングを行っていなかった
  • 肉の衛生検査をしていなかった
  • 各店舗では売れ残りのユッケを翌日の営業でも提供していた。

参考:ウィキペディア「フーズフォーラス」

上記の「牛レバー(内臓)の生食が禁止になった理由」でも触れました「生食用食肉の衛生基準」をもう一度見てみましょう。

▼「生食用食肉の衛生基準」の一部抜粋

 生食用食肉の成分規格目標
生食用食肉(牛又は馬の肝臓又は肉であって生食用食肉として販売する ものをいう。以下同じ。)は、糞便系大腸菌群(fecal coliforms)及びサルモ ネラ属菌が陰性でなければならない。

生食用食肉のトリミング表面の細菌汚染を取り除くため、筋膜、 スジ等表面を削り取る行為をいう。以下同じ。)及び細切(刺身用に切 分ける前のいわゆる册状にする行為をいう。以下同じ。)を行う場所は、 衛生的に支障のない場所であって他の設備と明確に区分されており、 低温保持に努めること。 また、洗浄、消毒に必要な専用の設備が設けられていること。

引用元:厚生労働省「平成10年生食用食肉等の安全性確保について

卸業者、焼肉店ともに「生食用食肉の衛生基準」に記載されている内容を守っていなかったことがわかります。

重大な食中毒を引き起こす原因菌「腸管出血性大腸菌」の危険性を甘く見ていた提供者側の怠慢な心が事件発生の大きな要因と考えられます。

この集団食中毒事件をきっかけに、生食用食肉の安全確保のためにより厳しい規制を施した「生食用食肉の規格基準」が制定されました。

2011年以降新たに制定された「生食用食肉の規格基準」とは?

2011に起きた集団食中毒事件をきっかけに、食品衛生法により生食用食肉に関する新たな基準「生食用食肉の規格基準」が設けられました。

▼「生食用食肉の規格基準」の主な内容

・腸内細菌科菌群が陰性でなければならないこと

・加工及び調理は、専用の設備を備えた衛生的な場所で、専用の器具を用い て行わなければならないこと

・肉塊の表面から深さ1cm 以上の部分までを 60℃で2分間以上加熱する方 法又はこれと同等以上の効果を有する方法で加熱殺菌しなければならないこと

 ・加工及び調理は、生食用食肉(牛肉)の安全性確保に必要な知識を習得し た者が行わなければならないこと 

引用元:厚生労働省「生食用食肉(牛肉)の規格基準設定に関するQ&A

などが規定されています。 

これらを満たした生食用牛肉を、「調理基準※」に従い保健所の許可を得た施設内であれば、牛の生食の提供が許されます。

※「調理基準」とは「生食用食肉の規格基準」の一つで、専用の施設・調理器具、衛生管理の徹底などの生食用食肉を扱う際の規定。

表面を徹底的に殺菌された牛肉、そして、調理の際の徹底した衛生管理。

これらを守れば、食中毒が起こる可能性は限りなくゼロに近いといえます。

新基準が制定されたその後は、提供条件が厳しいことからユッケを販売している飲食店は激減したもののユッケに関する食中毒は見られず信用を回復しつつありました。

しかし、前回の集団食中毒事件から約10年後の現在、ユッケによる食中毒は起きてしまったのです。

なぜ、新基準制定後にユッケによる食中毒が発生したのでしょう。

2022年京都府宇治市の食肉販売店「MEAT&FRESH TAKAMI」

今回の食中毒事件の概要は、同店の販売している「レアステーキ※」「ローストビーフ」を購入し、自宅へ持ち帰って食した9歳から90歳の男女23人が食中毒を発症。
そのなかの90歳の女性が腸管出血性大腸菌o 157により亡くなられたというものです。

※「レアステーキ」とは、生肉を約300度で6分間、スチームコンベンションという装置で加熱処理し、細切りにした商品。京都府はこれを加熱されていない「ユッケ」と判断しました。

まず驚いたのは、こちらのお店は「生食用食肉販売許可」を申請しておらず無許可で生食用食肉を販売していたのです。

国の定めた生食用食肉とその他の食肉の調理場・調理器具の区別などの衛生環境を満たしていないことになります。

同店社長いわく、加熱して販売しているので、許可を申請する必要はないと判断したとのこと。

生食用に使用する牛肉って?

通常、ユッケ(生食用食肉)に使用する牛肉は「生食用食肉の規格基準」のうちのひとつ「加工基準」を満たした生食用に加工された牛肉を使用します。

この基準は、食肉の表面にいるかもしれない食中毒細菌(食中毒を引き起こす細菌)
を、一定の設備において一定の加熱方法により死滅させ、安全な生食用食肉とすること
を目的とするものです。

引用元:農林水産省「生食用食肉の取扱いマニュアル(第2版)

今回の「レアステーキ」と称された商品は、この「加工基準」を満たしていない牛肉の表面を加熱殺菌し、火の通っていない生の部分だけを細切りにして実質ユッケとして販売していました。

どの段階で汚染されたのか?

上記でも触れましたが、牛肉の内部には食中毒菌は存在しません。「レアステーキ」「ローストビーフ」ともに牛肉の表面はしっかりと加熱処理しているため食中毒になる可能性は低いといえます。

となると考えられるのは、商品化するためのカットの段階で食中毒菌に汚染された可能性が高いです。

同店は大腸・小腸などのホルモンも扱っており、調理場・調理器具の区別や衛生管理により一層気を配らなければなりませんでした。

しかし、食中毒の症状を訴えた患者がでた8月下旬には、通常5人でしている加熱処理作業を、コロナの影響で半分以下の2人で作業をしていたとのこと。

生食用食肉を販売するための条件を満たしていないうえ、人数不足による忙しさにより、調理器具(包丁・まな板)の区別や、手洗い・手指消毒などの衛生管理を怠ったことが食中毒を起こした原因とみられます。

食中毒を予防するには?

食中毒対策と書かれた黒板文字
画像提供:スミノクさん

ユッケ(牛肉の生食)を提供する側が細心の注意を払うことは当然です。

しかし、食べる側のわれわれもユッケに限らず、どんな食材でも食中毒のリスクがあることを心にとめておき食中毒予防に努めましょう。

食中毒予防の3原則

食中毒菌を「つけない、増やさない、やっつける」

  • 細菌を食材に「つけない」
  • 食材に付着した細菌を「増やさない」
  • 食材・調理器具に付着した細菌を「やっつける」

細菌を食材に「つけない」

手洗い、手指消毒・調理器具の洗浄を行い、食材への最近の付着を防ぎます。

食材に付着した細菌を「増やさない」

調理後は速やかに食べる、もしくは適切な温度管理により細菌を増やさないようにします。

食材・調理器具に付着した細菌を「やっつける」

食材の加熱処理、調理器具の熱湯消毒・煮沸消毒により細菌をやっつけます。

参考:厚生労働省「食中毒

食中毒の心配のない「ユッケ」は存在しない?

ミートファクトリー熊野牛ユッケ
お取り寄せユッケ「熊野牛ユッケ

何度もいいますが、ユッケに限らずあらゆる食べ物には食中毒のリスクがあります

食中毒のリスクを限りなくゼロに近づけるためには、とにかく衛生管理を徹底することです。

ユッケ(生食用食肉)に関していえば、「生食用食肉加工認定施設」で製造し急速冷凍されたものは事実上最も安全といえます。

ユッケは禁止?安全なユッケの条件とは?

「生食用食肉加工認定施設」とは?

国の定めた「生食用食肉の規格基準」をすべて満たした施設(工場)

「生食用食肉加工認定施設」として認められるためには、とてつもなく厳しい条件をクリアしなければなりません。

そのため「生食用食肉加工認定施設」として認められている施設を所持している会社は、現段階で国内にわずか5社しかありません。

そんな「生食用食肉加工認定施設」で製造され急速冷凍した「ユッケ」を自宅で食べるのが一番安全に「ユッケ」を食べる方法といえます。

「生食用食肉加工認定施設」で製造されたユッケを実食した記事はこちら👇

まとめ

  • ユッケによる食中毒の原因は「腸管出血性大腸菌(O111、O157)」
  • 牛肉自体に最近は存在しないが、腸管には存在する
  • 食品に食中毒菌が付着する原因は、牛の解体時、人の手を介して、衛生害虫を介してなど
  • 牛レバーの生食が禁止になった理由は、レバー内部に「腸管出血性大腸菌」の存在が確認されたから
  • 死亡を伴う食中毒が発生した原因は提供者側の食中毒への甘い認識
  • 食中毒予防の3原則「つけない、増やさない、やっつける」
  • 1番安全なユッケは「生食用食肉加工認定施設」で製造し急速冷凍されたもの

ユッケで、美味しい思いはしても、悲しい思いはしたくありません。

生で食べられるものに価値を感じるわたしたち日本人、牛生食に関する正しい知識を持ちユッケを安全に美味しくいただきたいものです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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